
朝ドラおむすび第104話では、万博公園を訪れた永吉と聖人の対話が、親子の確執と和解への第一歩を描く重要なシーンとなりました。1970年の万博にまつわる永吉の知られざる過去が明かされる中、財布を落とした少年を巡る出来事が、失われた優しさを取り戻すきっかけとなります。
一方、病室では千佳が求めた味噌汁が、母との関係を見つめ直すきっかけとなり、結の栄養士としての使命が改めて強調されます。永吉が伝えた「人を助けることの意味」が、家族全員に深く刻まれ、最後にはプリクラに刻まれた家族の時間が、彼の最期を超えて新たな絆へとつながっていきます。
このエピソードでは、家族の過去と未来が交差し、それぞれのキャラクターが大切な決断を下します。永吉の最期がもたらした家族の新たな一歩とは何だったのか、その感動の瞬間を振り返ります。
- 永吉と聖人の親子関係の葛藤と和解の過程
- 1970年の万博と永吉の知られざる過去の影響
- 千佳の母への想いと結の栄養士としての成長
- 永吉の最期が家族に与えた影響と新たな絆の誕生
朝ドラおむすび第104話|家族の絆と過去の清算

永吉と聖人、万博公園での対話
物語がクライマックスへと進む第104話では、永吉と聖人が大阪万博公園を訪れ、これまでの親子関係や価値観の違いが浮き彫りになる。
万博公園の太陽の塔を見上げる永吉は、過去の記憶を振り返る。1970年の大阪万博は、彼にとって特別な時間だったが、その影で家族との時間を犠牲にしていたことは否めない。一方、聖人は「親父が万博を楽しんでいた頃、家族はどうしていたか」を考え、複雑な思いを抱いていた。
「じゃあ、あれはどうなんや?」
聖人は、父の行動が自分の人生にどのような影響を与えたのかを問いただす。特に、彼の学費を洪水被害者のために貸したことへのわだかまりが根強く残っていた。永吉は、ただ「お前の人生が気に入っとるなら、それでよか」と淡々と答えるが、それは「結果的に幸せならば問題ない」という彼なりの信念だった。
親子の間には、長年の確執が横たわっていたものの、聖人は「もし自分が同じ立場なら、親父と同じことをしたかもしれん」と思い始める。少しずつだが、永吉の生き方に理解を示し始める聖人。しかし、完全に納得するにはまだ時間が必要だった。
失われた財布がつなぐ人の優しさ
万博公園での親子の対話の最中、一人の女性が困った表情で助けを求めてきた。彼女は万博公園の案内係・向井で、小さな男の子が財布を落とし、見つからずに泣いているという。
「財布?どんな財布?」
「青いベリベリのやつ…。」
永吉は、すぐに財布を探しに向かう。聖人も加わり、公園中をくまなく探す姿は、ただの親子の時間ではなく「他人を助ける」という彼らの在り方を象徴していた。
やがて永吉が財布を見つけ、少年に手渡すと、少年は満面の笑みを浮かべる。向井も「本当に助かりました」と深く感謝し、場の空気は一気に和やかになった。
この出来事は、永吉の長年の価値観を示すものだった。彼は家族よりも他人を優先するように見えたが、その根底には「困った人を助ける」という信念があった。その精神は、徐々に聖人にも伝わりつつあった。
1970年の万博と永吉の知られざる過去
財布の一件が落ち着くと、向井はふと永吉を見つめ、「もしかして、米田英吉さん?」と問いかける。
「やっぱり英吉さんや! 私です!向井です!」
驚く永吉。向井は、1970年の大阪万博でレストランのウェイトレスをしており、当時、永吉は福岡から食材を届ける仕事をしていた。
「英吉さんがいなかったら、うちのレストランはやっていけなかった。」
向井の話によると、永吉は大阪と福岡を何度も往復し、レストランに食材を届けていた。万博期間中、会場で最も繁盛した店を支えていたのは彼だったのだ。しかし、その影で家族は父の帰りを待ち続けていた。
聖人は、父が家族よりも他人を優先してきたと感じていたが、実際は「自分にできることを誰かのためにする」ことが永吉の生き方だったことを知る。
「おやじは、家族よりも他人のために動いていたんやな…。」
それでも完全に理解できたわけではなかった。しかし、かつては「ただの頑固親父」だと思っていた父の生き方に、少しずつ敬意を抱き始める聖人。親子の間に確執は残るが、少しずつ歩み寄る兆しが見え始めた。
聖人の葛藤、親子の確執と和解
万博公園での時間を過ごす中で、聖人はこれまでの人生で感じてきた父・永吉への不満と葛藤に改めて向き合うこととなった。彼にとって永吉は、「家族よりも他人を助けることを優先する人間」であり、自分や母、妹たちを顧みなかった存在だった。しかし、公園での出来事や向井の話を聞く中で、永吉の価値観とその根底にある信念が明らかになっていく。
「じゃあ、あれはどうなんや?」
聖人は、父が自分の学費を洪水の被害者に貸したことについて改めて問い詰める。これは聖人にとって、人生を左右する大きな出来事だった。しかし、永吉は動じることなく、こう答えた。
「お前の人生が気に入っとるなら、それでよか。」
父の言葉に、聖人は一瞬、言葉を失う。永吉にとって「人を助けること」は自分の人生そのものであり、それによって家族との間に生じた溝を、彼は深く気にしていないようだった。聖人はそれに納得することができず、怒りがこみ上げてくる。
「なんてことしてくれたんや…いくら人助けのためとはいえ、俺の人生の分かれ道やったんやぞ!」
しかし、次の瞬間、自分が口にした言葉に驚く。父に対する不満をぶつけながらも、もし自分が同じ立場だったら、同じ選択をしてしまうのではないか…という疑念が湧き上がってきた。
「でも、もし似たようなことがあったら…俺も親父と同じことをやってもうたやろうな。」
永吉はにやりと笑い、誇らしげにこう言った。
「それでよか。それでこそ、俺の息子たい。」
このやり取りを通して、聖人はようやく父の生き方を理解し始める。完全にわだかまりが消えたわけではないが、長年続いてきた親子の確執に、一つの答えが見えた瞬間だった。
プリクラに刻まれた家族の時間
万博公園での時間を終えようとする頃、永吉は「せっかくやけん、記念に残ることをしようや」と提案する。聖人は戸惑うが、最終的に二人はプリクラを撮ることに決める。
「おじいちゃん、男前にしてもろたな。」
「どういうことや?」
「かっこいいや。」
撮影前のやり取りは、これまでの緊張感を和らげるような、どこか微笑ましいものだった。父と息子として、ぎこちないながらも心が通じ始めていることを感じさせる瞬間だった。
プリクラのシャッターが切られる。
そこに映ったのは、いつもと変わらぬ頑固な父と、苦笑しながらもどこか満足げな息子の姿だった。
この後、物語は急展開を迎える。
ナレーションが入る——
「その1ヶ月後、英吉さんはこの世を去りました。」
永吉の死は、あまりにも突然だった。しかし、彼の最期は悲劇ではなく、家族にとって「絆を結び直す時間」になった。そしてプリクラの写真は、彼の生きた証として、家族の大切な宝物となる。
朝ドラおむすび第104話|結と千佳の成長と未来

病室での会話、千佳が求めた味噌汁
病室では、千佳(松井玲奈)が体調を崩し、食欲を失っていた。これまで食べ物を口にすることさえ難しかった彼女だったが、ふと何かを思い出したように呟く。
「食べたいもん、思いついて。」
結(橋本環奈)は驚きながら問いかける。
「何が食べたい?」
千佳は少し考えた後、懐かしそうに答えた。
「ママの作ったお味噌汁。」
その一言は、彼女の心の奥底にある母への想い、そして家族の温もりへの渇望を示していた。食べることができなかった日々が続いていた中で、千佳が母の味を思い出し、それを求めたことは、彼女が少しずつ前を向き始めた証だった。
この会話を聞いた結は、静かに千佳を見つめ、「それなら私が作る」と決意する。栄養士としてだけでなく、家族として、千佳の気持ちに寄り添いたいという思いが芽生えていた。
結の栄養士としての使命と優しさ
千佳の言葉を受け、結は病院の厨房に立つ。彼女の心には「患者さんのために、今うちができることをしたい」という強い意志があった。
妊婦の栄養管理に携わる中で、食欲がない患者に対して何ができるのかを常に模索していた結。この日は、優しい味わいで心も温まる特製の味噌汁を作ることを決める。
病室に運ばれた味噌汁の香りに、千佳は少し顔を上げる。そして、恐る恐る一口すすると、驚いたように目を見開いた。
「美味しい…。ママの味噌汁みたい。」
この言葉に、結は安堵しながら微笑む。
この場面は、結が「食の力」を改めて実感する瞬間でもあった。栄養士として、人の健康を支えるだけでなく、心をも支えられること。それが彼女にとっての使命であると、改めて感じるのだった。
人を助けることの意味とは?永吉の教え
一方、万博公園では、永吉(松平健)が聖人とともに過ごしていた。
結と千佳の病室でのやり取りと呼応するかのように、永吉は公園で聖人と会話を交わしていた。
「困った人がおったら何を置いても助ける。それでこそ俺の息子。」
これは、永吉が生涯をかけて貫いてきた信念だった。彼にとって、人を助けることは「いつか自分に返ってくるもの」ではなく、「ただ純粋にやるべきこと」だった。
しかし、聖人は父の考えに疑問を持っていた。
「でも、誰かを助けたくても、自分が困っとって助けられん時はどうしたらいいと?」
この問いに対し、永吉は迷いなく答えた。
「その時は誰かに頼ったらよか。人は、声を出して叫べば誰かが助けてくれる。世の中、そうやって回っとる。」
この言葉は、結が病院で実感していた「食を通じた人助け」の考えとも繋がるものだった。永吉の人生観は、彼の子どもや孫、そして周囲の人々にも少しずつ受け継がれていく。
千佳が母との関係に向き合う決意
千佳(松井玲奈)は病室で結(橋本環奈)と会話を交わす中で、ある決意を固める。彼女は長い間、母との関係に距離を感じていた。過去のすれ違いや、言葉にできなかった想いが積み重なり、母と正面から向き合うことを避けていたのだ。しかし、この日、彼女の心に変化が生まれる。
食欲をなくしていた千佳が、突然「ママの作ったお味噌汁が食べたい」と口にしたとき、それは単なる食への欲求ではなく、「母の温もりを感じたい」という無意識の願いだった。そして、結が心を込めて作った味噌汁を口にした瞬間、その味が千佳の記憶の奥底に眠っていた母の姿を呼び起こす。
「美味しい…。ママの味噌汁みたい。」
この言葉を発したとき、千佳は自分の中に残る母への想いと向き合うことを決めた。
「遊兵(夫)…ママに電話してみようかな。」
これまで、自分から母に連絡を取ることを躊躇していた千佳。しかし、「親子の縁って、簡単に切れへんみたいやから」という結の言葉が彼女の背中を押した。
この場面は、千佳がこれまで避けていた「家族との向き合い方」を変えようとする大きな転機を示していた。母との関係修復は簡単なことではないが、一歩を踏み出したことで、千佳は新たな未来へ進もうとしていた。
永吉の最期がもたらした家族の新たな一歩
一方、大阪万博公園での父子の時間を経て、永吉(松平健)と聖人(高橋克典)は少しずつ関係を修復し始めていた。長年の確執を乗り越えようとする二人の間には、まだ完全な理解とは言えないまでも、互いの生き方を尊重しようとする姿勢が見え始めていた。
そんな中、永吉は「記念に」と提案し、聖人とプリクラを撮ることにする。これまで親子の間で写真を撮るような機会はほとんどなかったが、この瞬間、二人はわずかに心を通わせていた。
「その1ヶ月後、英吉さんはこの世を去りました。」
突然のナレーションが入り、視聴者に衝撃を与える。
しかし、彼の死は単なる悲劇ではなかった。むしろ、それは家族がそれぞれの関係を見つめ直し、新たな一歩を踏み出す契機となった。
- 聖人は、父の生き方を受け入れ、親子の確執を乗り越えようとしていた。
- 千佳は、母との関係を修復しようと決意した。
- 結は、栄養士としての使命をより深く理解し、家族を支えていく決意を固めた。
そして、残されたプリクラの写真には、親子のぎこちないながらも確かに存在する絆が刻まれていた。永吉の死は、彼が家族に残した最後の贈り物だったのかもしれない。
このエピソードは、永吉の人生の幕引きを描きながら、彼の想いが家族の中で受け継がれ、未来へとつながっていくことを示した。悲しみを超えて、家族が新しい一歩を踏み出す瞬間を丁寧に描いた感動的な回となった。
コメント